小さな恋のメモリー

昼休み、地下鉄をくぐって道路の反対側に出ようとした道すがら、
初々しいカップルのような、おそらくは高校生の男子と女子が、
一冊の文庫本を手に、はにかみながら話している姿を見かけた。
普段ならカップルを目にして、微笑ましく感じるなんて皆無なのだけれども、
この二人はなんだかとてもあたたかい気持にさせられた。
久々の定食屋でまったりと白飯豚汁卵焼にカレイの煮つけを喰らった後、
キムチ横丁で余計に買ってしまうもホクホク気分でまた地下鉄口へ。
小一時間ほど経ったはずの通路では、
先程と同様に二人がまだ話していた。
そうなんだよなぁ。
時間がいくらあっても足りないんだろうな。
なんだかとても甘酸っぱいものが胸にひろがってきた。
まったくそこらへんの喫茶店に入りゃあいいじゃないかよ...
下校時のちょっとしたきっかけに賭けたのかもしれないか...
せっかくだから、文庫本はなんだったのか知りたかったけれど、
いいもん観たような。
 
もう戻れないあの頃が過って、腐りかけの乙女心が疼いて、
まな板の上でじったんばったんしていやがるのを
包丁を握って醒めた目でみつめるのは三十路前の荒んだ自分だ。
イケナイネ... こんな時は『ヒゲの未亡人の休日』だね。
 
ヒゲの未亡人の休日
笑ってもいいんだよね?
耳にやさしいバカラックマナーかな...
しかしそこへ股がるは鳥肌必至のダンディキャンディヴォイス...
三十路の小娘が...♪ たとえ誰も振り向かなくてもね♪
世界は孤独でいっぱいだもんね♪
ヒゲミボオンステージ...いつかは体験してみたいね(はあと)