なんてことだ...。
この日は外に出ることがなかった。
正確に言えば、九時半過ぎ頃に目を覚まして、
寝惚けたままに、
おおさむこさむ...RONSAm部屋から外へ出た...
不燃ゴミを捨てねばならぬ...けれども回収車は過ぎた後...で、
また寝てしまったような憶えがあるけれど、
その後は部屋で一日過ごした。
それでもそれなりに充実した休日を過ごせたような気がする。
 
「ーそこまですることないよ、ありがと。
 礼を言う時、彼女はありがとうの「と」できっぱりと止める癖があって、
 軽く首を振ってからその「う」のない言葉をこちらに投げた。
 どんな状況でも押しつけがましさのない礼のひとことを発するのは大変に難しい。
 彼女の「ありがと」は、その数少ない例外だったが、
 実際に耳にするのは久しぶりだった。」

堀江敏幸 「砂売りが通る」より抜粋。『 熊の敷石 (講談社文庫)』所収。

 
そうなのだ。
"業務的台詞"のような挨拶世界に浸ってしまっているので、
普段意識もしないようなことだけれど、
「ありがとう」という気持は、誰にでも確かにあるはずだろう。
しかしそれを相手に伝えることが出来ているのかといえば、
極端に怪しいような気がしてくるし、自信もない。
このような文章に過剰に反応してしまう自分は、
未だに病み上がりどころか、「Still Ill」であるのかもしれない。
今年またひとつ心して行うことを掲げてみる。
声に出してしっかりと「ありがとう」と伝えること。
このようなところから始めるしかないのだ。
焦らずゆっくりと。
正直に親切に...って、難しいよな。