今年最初に聴いた新譜...?

ドリームズ・カム・トゥルー

ドリームズ・カム・トゥルー

「狂気の聖人」ジュディ・シル
ただでさえミステリアスな存在で、ドラッグ中毒に波瀾万丈な人生等数少ない話題と、
それとは裏腹に唯一無二の美しい歌声に、その曲群の崇高さからも神格化されてきた。
僕もその歌に音に魅了されてしまった一人であるけれど、
そんな彼女が歌う姿を映像とは言え観ることが叶うとは夢にも想わなかった。
セピア色の世界の中、おそらくは大学のキャンバス内だろうか、
気のおけない人たちの前で歌う彼女は紛れもなくジュディ・シルであった。
「Jesus Was a Cross Maker」や「The Kiss」など、
自分の大好きな曲まで収録されていて、それだけでもう胸がいっぱいになった。
そして、客が一緒に歌い合わせるのが聴こえて来るともう目頭が熱くなった。
胸が痛むような事実が綴られているライナーも、
彼女が祈るように歌っていたことを裏付けるには充分すぎるほどだ。
Disc1の「幻のサードアルバム」と位置づけられている8曲は、
基本的にはバンドとのセッションといった趣の音になっていて、
前二作での個人的に強く感じた「孤高のSSW」としての印象は薄い。
もしかしたらこれは、
ジム・オルークのミックスによるところが大きいのかもしれないけれど、
ライナーでの彼のコメントを読んでしまった後には、
ただ頷くことしかできないし、
それこそこういった音をジュディ・シル本人が望んでいたような気がしてくる。
その中で最後を飾るピアノでの弾き語りの「Til Dreams Come True
この曲がアルバムの白眉のような気がする。
やはり...と言ったらなんだけれども、弾き語りが似合うと想う。
Disc2は「Lost Songs」と題された発掘音源。
若い頃のホームレコーディングやデモ音源といった様相で、
「500 Miles」なんてデュエットで歌っていたりする。
もう既にあの特徴のあるな歌い回しが聴ける。
これはこれで素朴で美しい。
しかし、あのセピア色の映像の感動と衝撃は大きかったな...。
ありがとう。ありがとう。
 

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余談になるけれど、
昨日BOで見かけたミュージックマガジン(昨年の何月号だったか忘れたが)の、
「目かくしプレイ」が鈴木惣一朗がゲストで、想わず立ち読みした。
そのなかでまず、もうみんな大好きVashti Bunyanの新譜が並べられていて、
そのコメントに「僕の三大歌姫はVashti Bunyan,Linda Perhacs,Judee Sillなんですよ。」と
書かれていて、驚いた。
ひとり―ALTOGETHER ALONE』で三者とも選ばれていたから好きなことは知っていたし、
なんといってもジュディ・シルを知ったのは、
細野さんのラジオで鈴木氏が「Crayon Angels」をかけてくれたからであって、
もうあれ以来自分にとっては恩師ならぬ音師なのであります(笑)
それにしてもこの三人とはドツボでした...そんなに好きだったのかぁ...!
これは嬉しいサプライズであった。
音師はこのジュディ・シルの映像をどんな気持で観たのだろうか...。