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山川方夫 / 夏の葬列 (集英社文庫)
「彼は、表面的にはきわめて社交的な男だったが、
その実いつもいまにも爆発しそうな
さまざまな苦しみをかかえて、懸命に生きていた。
その孤独な、孤立無援な耐え方が私は好きだった。」
(解説掲載:江藤淳『山川方夫のこと』より)
そんな匂いは、読書経験の乏しい高校生にも、
ぼんやりとだが、感じ取ることができた。
薄ら笑いを浮かべる男の顔が浮かんでいた。
時を隔てた今、読み返してみると、
男は余計にくっきりと浮かび上がり、
どこからともなく薄ら笑いを感じて、
振り返れば...
寂しげで疲弊した男の残像を
感じるのである。
夏が来れば憶い出す、
静かな翳り、遠い幻...。