悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)/マイケル・ローゼン:作 クェンティン・ブレイク:絵 谷川俊太郎:訳

 
悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)
 
感動は人それぞれ。
僕は、絵本の"絵"が好きだ。
同様に、フォトエッセイと呼ばれる本の"写真"が好きだ。
まず、文章を読まずに絵だけを読んでゆく。
それで、印象に残ったものは文章を読んでみる。
 
この『悲しい本』は、男の笑顔から始まる。
その笑顔の歪さには、なんだか憶えがある。
男に訪れた拭いきれない大きな悲しみを、絵が語ってゆく。
明から暗へ、光から闇へと移ろい、
やがては闇の中で光を探すように。
言葉は、淡々と絵に添い続ける。
男の傷口を広げぬようそっと伝え続ける。
そうして引き込まれていった物語の終末、
楽しかった想い出。いつか見た夢のような想い出。
ロウソクを立てなくちゃ...。
最後のページは、僕にとっては救いようの無い闇でしかなかった。
最後の"絵"の持つ残酷さに、胸がふるえた。
 
この物語から多勢の書く"あたたかさ"を感じ得るには、
僕のなかでは、なにかが欠けてしまっているのかもしれない。
それでもやはり、こんなに深い闇の中にも光は灯っていると、
自分を納得させるようにロウソクを眺めた。