三楽日記

 
もやもやはやっぱりもやもやでしかないけれど。
 
さてさて、この日から父の入院生活が始まりました。
お大袈裟に書いてみれば、
腰の骨を矯正しないと、神経が痛んで歩けなくなるという話です。
本人でないとそこらあたりの微妙な感覚はわかりませんが、
今まで渋っていた手術をようやく決意した裏には、
やはりそれなりの苦痛があったのだろうと想われます。
明後日には手術と相成るわけですが、
この日がお決まりの休日であった自分は、
両親共々から無理しなくていいよ...と言われながらも、
親が入院するってのに遊びに行ってられるかよ?という心境で、
同じそわそわするのでも側に居た方がまだマシだとも想い、
今までに記憶がないほどの早起きから始まり、
帰路には想いがけぬ幸運もあり、とても濃い休日となりました。
 
午前十時過ぎに、よく見慣れた街に居る自分への違和感と、
心ばかりそわそわ先走って、体が追いついてきてきない感覚は、
なんとも妙ではあったけれど、悪い気分でもなかった。
御茶ノ水にある入院先の病院へ着いて、
ロビーを見渡してみてもそれらしい姿は見当たらず、
しばしあちこち見てまわり、入院受付の前で座って一息ついていたら、
すぐに見憶えのある姿が目について、
遠目からでも感じられる硬い雰囲気を漂わせていました。
すこし意気込んで、二人の元へ向かい、先ほど案内された入院受付へと連れてゆく。
父は暑い暑い...と洩らしながらの手続きだったが、
明らかに緊張しているのが伝わってきて、ちょっと胸が締めつけられた。
60過ぎて初めての入院に初めての手術...だもんなぁ。
医者に掛かることにおいては、
中学に上がる前にちょっとした手術と三週間ほどの入院を経験した
自分の方が先輩なのだ...って、先輩面をする余裕もなかったけれど。
 
病棟を指示されて、向かった四階のベッドを見てびっくり。
一つにつき一台ずつテレビが設置されていた。
これは気分的に違うよなぁ。ありがたいなぁと感心した。
視聴はイヤホンを付けて、一枚千円の度数入りカードで観ることができる。
さっきまでイライラしていたようにも見えた父も、
楽な寝間着に着替えて、ベッドに腰を落着かせてからは、
看護士さんからの質問などにも陽気に答えていたので、こちらもホッとした。
細かいことが気になるようで、最初のうちはこれはどこであれはそこで...と、
バタバタしていたけれど、粗方揃えられたら他にすることもなくなって、
結局13時半頃には帰ることにした。
 
心配なのは、これからしばらく付き添い看護することになる母も同様で、
この日も病院を出て遅い昼飯を食べに行くまでの表情には、
どこか気疲れのための暗さが見て取れた。
父とは反対で都会が苦手な母であるし、それなりの歳でもあるし、
体調を崩さなきゃあいいなぁと気掛かりではあるけれど、
妹の家では足を伸ばして大の字でも眠れるから良いわ〜と、
皮肉も口走るくらいだから、大丈夫のようだ。
これからひと月は、帰りに御茶ノ水に通う生活となる。
家族が揃って集まる機会がこんなふうに増えるとは、
自分の年齢、親の年齢、いつのまにかこんなところまでやってきたんだなぁ...と、
静かな焦燥感としてじりじり胸を焦がし始めた。
 
そういえば...、看護士さんは可愛い人が多いかな...(笑)