Charles Keeping / ALFIE finds "The Other Side of the World"*1

 
*2

テムズ川下流にHope Place(希望の場所)と呼ばれる小さな通りがあって、
砂糖工場の後ろに、アルフィーという名の男の子が住んでいました。
毎週金曜日には、水夫のバンティとして知られている一人の老人が
犬を連れてものすごく古い蓄音機を鳴らしにやってきました。
砂糖工場の人たちは時々バンティにペニー硬貨を投げてくれるのでした。
アルフィはバンティが好きでした。
なぜならバンティはよく、船に乗っていたころの話や冒険の話、
すなわち世界の反対側の話をしてくれたからです。
一年中暑い国の話や凍るように寒い国の話、アルフィは自分も行ってみたいと思いました。
そんなある霧のかかった金曜日、バンティが現れません。
がっかりしてアルフィは世界の反対側の国々のことを思い描きながら歩き出しました。
そしてアルフィが見たものは。*3

 
オークションの画像を目にして、鳥肌が立った。
タイトルも素晴らしい。この恋逃がすものか!と即購入した。
 
二度もケイト・グリーナウェイ賞を受賞した作家であり、
同時代のジョン・バーニンガムやブライアン・ワイルドスミスと並んで、
英国を代表する独創的な絵本作家として知られているけれど、
現在の日本での知名度が低いという印象は、気のせいではないだろう。
人によっては、岩波書店刊、ローズマリ・サトクリフの歴史ロマン*4
挿絵画家して馴染み深いのかもしれない。
 
自分はといえば、この絵本に出逢ってから、
うろ憶えのその作家名を調べていた過程で、
随分前に購入してそれなりに気に入っていたほるぷ出版の絵本、
エミリーさんとまぼろしの鳥』の作者だと気づき驚かされた。
そういえば、所々イマジネーションの残香を感じ取れる。
それにしても、ここまでの夢幻性はない。
この極彩色から程遠い線が織り成す美しさや、
確信犯なのか偶然の産物なのか判断がつかない
濁りが広がった無垢な色相も
筆舌に尽くし難くただただ見蕩れるばかり。

同時期に購入した、『ジョゼフのにわ』では、
創られた時期はそれほど変わらないようだけれど、
絵で語る作風もその線と色彩感覚も技術的に洗練されて、
孤独な少年が花を愛でるあまりに起きてしまった現実に、
心象風景を取り混ぜながら、より歪でよりクリアに描き出した一冊。
それでも、どこか「かちっとまとまってしまった」感は否めず、
さらには『ジョゼフ〜』に比べてあたたかみのある『ALFIE〜』の方が、
個人的にはお気に入りで感動も大きかったのです。
 
チャールズ・キーピングは、この絵本を創っている時、
いったいなにを想い、なにを感じて、なにをみつめていたのだろうか。
観れば視る程、その絵世界に惹かれてゆく。
つまらない現実など放り出して、この作家のコレクターになってしまいたい..。
 
 

*1:ISBN:0531016021

*2:オークションの出品者の方の画像をご好意により使用させていただきました。

*3:キュリオ・ブックスさんの売切品一覧(http://www.lab-curio.com/book/soldA-F.html)から転載させて頂きました。

*4:http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/11/7/110826=.html