Idaho / Lone Gunman

 
ザ・ローン・ガンマン
 
本人曰く、『Dream Pop』だそうだ。
最近よく目耳にするようになった、サッドコアやスロウコアといった括りには
未だに馴染めないし、この先納得できることもないだろう。
かつての面影をそこに求めることもあるけれど、
それよりも"変わらないなにか"を内包したままの違和感が、
新たな感動にまで至ることを望んでいたりする。
しかし、違和感は違和感のまま過ぎ去ってしまうことが多い。
Idaho=Jeff Martinの十作目にして、
新たなる音景への旅立ちを告げる傑作。
彼の心象風景を音にしようとするやりかたは、
その時見えた景色に一番近いところや、
自分のなかで響いていたものを、求め集めて創るので、
それこそジャンルの壁など皆無に等しい。
そう考えると、Bobby Gillespieも近い存在のような気がする。
このアルバムを一聴した時にはとても歪で不器用さが窺えるほどで、
違和感そのものだった。こんなふうになっちまって...と。
しかし、
二度三度と聴いてみれば、彼の真摯で強欲なまでの音に対する姿勢が、
ただでさえ緩みがちな涙腺を刺激されてこみ上げてくるものがある。
目を瞑って、彼の描いた景色を浮かべるようにして。
儚さと図太さ。
独りの夢想者の歌と音が、どこまでもどこまでも沁みてゆく。
 
他人の夢のなかで漂う自分。
すこし寂しいような...
でもきっとこれくらいがちょうどいいのだ。
音楽は独りで聴くものだけれど、
その感動は、どうしても誰かに伝えなければ、
もどかしく気が済まないようにできている。

& records