SMOG / Kicking a Couple Around

 
ひさびさに、続けてゆく意志が揺らいでいるこの頃。
書き損ねたのを良いことに、また音盤を一枚紹介したい。
秋の夜長に、灯を消して、アナログで聴きたい一枚。
A面は、おそらく英国BBCにおけるセッションからで、
"陽のあたる場所での録音物"といった印象。
けして悪くはないが、なんだか馴染みきれない。
後の三曲が、"importantinmylife"
録音は、"the gracious"Steve Albiniで、
初めて聴いた十年近く前では、NirvanaIn Utero』で、
一躍、世間一般にも名が知られるようになり、
その後しばらくは引く手あまただったような憶えがある。
個人的には、しばらく後になって聴いたBig Black*1も好きだけど、
他所仕事としての、PixiesSurfer Rosa』がベストだろうか。
この音盤を知ることができたのは、
今は無き『BEAT UK』*2という深夜の音楽情報番組で、
"ネット"などという知識すらあったかどうか怪しい当時、
その1〜2分程度の映像と音楽から受けた感動を頼りに、
音盤世界を彷徨していたあの時期が、
なんだかとても純粋に憶えて愛おしい。
その玉石混交の中から出逢った、奇跡のひとつが、
SMOGの"I Break Horses"だった。
そこで確認できたのは、
モノクロの歪みのなか、歌を口ずさむ男の横顔と、
まさに"枯れた"という表現が似つかわしい歌とギターであった。
この音と同様に(?)空虚で荒んでいた日々を過ごしていた自分には、
とても心地よい響きであったがために、
その数分を何度も繰り返し眺め浸っていた憶えもある。
それから時を経て、なんとかやり過ごしている今現在でも、
この曲群の持つ不思議な静けさに、未だ魅了され続けている。
アルビニの仕事による素晴らしさも確かなのだけど、
SMOGの他の作品からはなかなか感じ取れなかった*3
それこそ、Nick DrakeFive Leaves Left』のジャケットの様な、
屋根裏部屋での仄暗さと微かな陽射しにも似た世界がここにはある。
しかし、この裸の歌に浸りすぎると、
ふと、耳元で、
おまえほんとうはわかっているんじゃないのかもういいじゃないか
と、囁かれているような気分になり、危うくもある。
このEPは、SMOGにおいては、よく識者が使う"本質"には遠く、
ある"側面"なのかもしれないが、そんなことはどうでもよく...
自分にとってとても大切な一枚であるということを、
誰かに伝えたい夜であります。
 
 

Kicking a Couple Around

Kicking a Couple Around

*1:オススメは『Rich Man's 8 Track Tape』"ジャンク"というジャンルを代表する存在らしいです。

*2:http://www.fujitv.co.jp/jp/b_hp/beatuk/

*3:当時の話で...今、聴いてみたら違うのかもしれない