アントニオ・タブッキ / インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑) 須賀敦子=訳

 
インド夜想曲
 
これこそが、自分が探し求めていた"幻想文学"だと想った。
現実のなかの非現実、日常のなかの非日常。
未だ知らぬインドの熱気を感じさせながら、
心地よい靄に包まれるように物語に吸い込まれてゆく。
「僕」だと想っていた僕を失う恍惚感。
かつてぼんやり夢見た、畸形の世界や危うい憧憬に
なんの抵抗もなく溺れている自分がいる。
美しすぎる、十二の夜を憶い出す。
そうだ... ここには、いつかきっと来たことがある。
 
"これは、不眠の本であるだけでなく、旅の本である。"