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これが歴史的名盤。工藤冬里+大村(工藤)礼子によるNOISE「天皇」(1981)が、オリジナルに忠実な紙ジャケ&リマスタリング再発!アルケミーより3/10発売。 from BRIDGE INC.
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"工藤冬里の"と言うよりは、大村礼子の『NOISE/天皇』だろう。
僕がこの音盤を知ったのは、もう五〜六年前のことだろうか。
渚にての1st収録の"あなたを捨てる"という曲における、
工藤冬里のピアノを聴いて衝撃を受け、
この普通じゃないピアノを弾く人がどんな音楽をやっていたのか...!?と
乏しい知識と余りある熱意で(笑)、関連する音盤から活動経歴まで調べたところ、
ちょうど渚にて柴山伸二氏主宰のオルグレーベルから、
件の音源の再発LPが出ていたので、早速買い求めた。
購入したのは、ユニオンかモダ〜ンか...。
どちらかであることは間違いないが、もう記憶が定かでない。
その頃の自分は、過去/現在問わず日本のアングラ/インディーズに興味を持ち、
刺激的な音聴きたさから様々なアーティスト/バンドを聴き漁っていた..。
だから、それほど奇抜な音を聴いても驚いたり受けつけないということは
少なくなってきてはいたのだけれど...
これは違った...いや、出逢ってしまったというのだろうか
ジャケットのどこか荒んだ空地に佇む二人の男女が残した音とは?
工藤冬里という人間の若かりし頃の演奏とは?
幼ささえ残る大村礼子という女性が書いた重くて痛い歌詞,,,。
軽い興奮状態のまま針を落とし、聴き始めてまず浮かんだのは、
黒沢清の『CURE キュア [DVD]』という映画の
エンディングに近い廃屋(よく憶えていないが)でのシーンだった...。
その後は、
「このまま聴き続けていても大丈夫かな...?」
「これ本当に同じ人間が創ったんだろうか...?」
「この可愛い人が歌ってるのかよ...?」
などと、のめり込むように聴く訳でもないが、意識は惹きつけられたままに。
あえて感情を排したような響きが余計に胸に突き刺さってくる歌...
"歌"と呼んでしまうのもなんだかすっきりしないところではあるが。
工藤冬里のオルガンはむしろ親しみやすい響きとして、僕には作用したけれど、
聴いているうちにだんだん音色が歪んでいくような気がして、怖くなった憶えがある。
たとえば、"地球は青い"という曲の畸形さ...純粋さ...、
Psychedelicというのはこういうことではないか...と想いました。
通して聴き終えた後の妙な感動は今でも忘れません。
なんだか禁断の一線を踏み越えてしまったような気まずさ、
それでもどこか満たされていて、また欲しくなっている自分がいて...。
その後は想い出しては聴いて、この危うい恍惚感に浸っていました。
しばらくして、Maher Shalal Hash Bazとしての音源を聴くことが叶い、
その表装上のポップさと、工藤冬里の歌の素晴らしさにまた驚くことになるのですが...。
それはまた別の話として。
この再発のニュースを見て、久しぶりに聴き返してみましたが、
やっぱりこの世のものならざる美しさがあるけど.ヘヴィーだなぁと...(苦笑)
これをパステルズ、グラスゴー系からの流れでマヘルを好きになった人が、
嬉々として聴いたら...キツイんじゃないかなぁ(笑)
斯言う自分も、ここ最近はすっかり尖って激しい音を聴く機会が減って、
馴染んで浸る音の代表といえば...