読了。

邪魅の雫 (講談社ノベルス)
ミステリが苦手な自分がなぜに、
こんなに蘊蓄だらけで、しかもややこしい謎解きの小説を、
辟易しながらも熱心に読んでいるのかといえば、
あらかじめ想定できる果てしない物語を、
黒衣の拝み屋や神がかった探偵や、うだつの上がらない小説家達の
どのような言葉で締めくくられるのかを欲しているからであって、
失礼な話ながら、誰が犯人でとかどのような経緯でとかいう筋道は、
あくまで付録に過ぎなかったりする。
そして今作品も、読書には無縁に等しかった上に、
二十歳そこそこの呆けてばかりいた若者を魅了した時と同様に、
読了後には、涙が頬をつたうような装置としてしっかり機能していた。
憑かれたんだか落とされたんだかわからないけれども、
読み終えてしまうと、胸いっぱいです。
 
以下、ネタバレ注意...というほどでもありませんが。(笑)
それにしても、京極先生の頁の区切り方へのこだわりは有名ですが、
細かいことだけれど、471頁、627頁、795頁、811頁あたりは、
想わず唸ってまた戻り再度眺めてしまうくらい素晴らしいです(笑)
そして巻頭に結末を匂わせる展開は、「絡新婦の理」と同様で、
余韻に浸りながらまた読み返せるというおまけのような感覚がとても好きです。
警察小説(といっても読んだことはないのだけれど)の雰囲気が強かったようで、
誰が誰で...と追いかけるのがなかなか大変でしたね。
それ以上に、美咲と美菜と恵がどこでどうなって...ってのは、
未だになんだかぼやけてる(苦笑) 実在しないと説かれても...へぇ!?って感じで...
これだからミステリは苦手だ...(涙)
登場人物のなかでは、西田に一番感情移入してしまった。
予想通り、結末にも登場することとなったのだけれど、
彼に対しての憑物落としの場面でだんだんと感極まってきて...
「ああ。」で、 こちらも、ああ...(涙)
必ず絡んでくると想っていた郷島が、最後出てこなかったのは、
少し物足りなくもありましたけれど、
それでも。鳥肌もののラスト数頁...裏切らないなぁ!と。
結果、救われるような内容ではないのに、
涙があふれてきてしまった。
執拗な内角攻めで、わかっていても外角のボール球に手が出てしまう...って、
なんだか的外れのような例えですけれど(笑)、
榎木津探偵... 今回も効果は覿面でした。
 
それほど熱狂的に追いかけてはいないので、
巻末の作品一覧にアナウンスされている「鵺の碑」がどんな作品になるかは、
まったく知りませんが、またしんどくても読んでしまうんだろうなぁ。