夢の話

明け方、だんだんと寒気が体に凍み始めて、
ようやくこたつ布団を引っ掛けているだけで寝てしまったことに気づき、
ベッドに潜り込んだ。
それから、昼頃まで惰眠を貪る間にみた夢。
普段は夢などみることもないほどぐっすりと、
しかも短時間の睡眠で過ごしているので、
本当にごくたまに残る夢の感触は新鮮だ。
通常は筋は通らず現実感もなく、呆れ笑いを誘うものばかりだけれど、
この夢は違った。
起床した後は、その余韻の大きさに呑み込まれて、せつなくなった。
 
その人に出逢ったのは、かれこれもう四年も前になろうか。
今では、時折憶い出しては、何気なくメールをするくらいの存在として、
しかしいつまでもつながりを保ちたい一人であるくらいに、
こちらは慕っているのだけれど、どうにも中途半端であり...
向こうはおそらく僕のことなど、普段は意識の欠片も持ち合わせていないだろう。
 
そんな彼女のことを僕は一時期とても好きであった。
二人きりで喫茶店で話をしたこともあったっけ。
 
そんな彼女との幻の邂逅...。
ぼんやりと、しかし濃く憶えているのは、
二人でどこかの祭かなにかの出店やら屋台を廻り歩いていること。
たしかになにか話しているのだが、憶えていない。
しかし、とても楽しかったこと、
珍しい串菓子を笑いながら食べている景色がやたらと残っている。
なにより、その笑顔が...。
とても穏やかな時間だった。
なにも起こらない静かなひと時。
しかし、薄らとその夢をみている時に感じられた違和感というのは、
結局、これは夢なんだという諦観に他ならないのだろう。
 
起床した後の余韻による幸福感と、現実に放り出された虚無感に包まれた僕は、
そりゃあもうちょっと叫びたくなったさ...。
溜息ひとつ、想い巡らせ、せつなさから逃れ、
ある休日はこうして始まり、何事もなく過ぎてゆき...
夜にまた憶い返しては、己の不甲斐なさを嘆く。
 
あのときもしも...とか、
いやぁ...ほんとうにぼくはなさけなくてむだにろまんちっくだ...
さいごのさいごでへんかんできなくなったのもよけいなおいうちだ...
わかることなんてけっきょくなにもありゃしない。