早めに起きる。
今日で帰るのだなぁ...と、
なんともいえぬ、ほんとうになんともいえない
気持が静かに広がっていった。
風呂に浸かり、遅れて朝飯にお雑煮をいただく。
職場の土産に、二日から開いていた菓子店で最中を揃えてもらった。
懐かしのシュークリームを食べる。
この店のバナナケーキが好きだったっけ。
 
お世話になりました。
この先どうなるかわかりませんが、
僕はなんとか頑張ります。
素敵な嫁さん見つかるように、
願っていてください。
素敵な写真が撮れるように、
休日はデジカメ持って出かけます。
 
帰京するまでに一度船を乗換えるのだが、
汽船から移ったジェット船でちょっと酔った。
席は窮屈だし、眠れないし、首を寝違えるし、
この船とはどうも相性が悪い。
そういや去年もしんどかったっけなぁ...と憶い出した。
電車に揺られとぼとぼ歩き、
だんだんと見慣れた街並に溶けてゆき、
あぁまた戻ってきた...と、心の灯が消えてゆく。
 
三日ぶりに戻ってみれば、
自分の部屋がとても汚く映った。
宝の持ち腐れだ。
まだ間に合うのだろうか。
 
ある客が、
十冊近くの書籍を購入して、
自分が袋に詰めている時に、
得意げに話しかけて来た。
「こんなに買うけどさ、
 実際読むのは半分くらいなんだよ。
 それで役に立つのは一頁くらいなんだよ。
 でもさ、それで充分じゃない?」
自分はバカ正直な上に話下手なので、
気の利いたお世辞もツッコミも返せなかったし、
痛いことを言うなぁと寂しくなってしまった。
わかっているような、わかりたくないような。
できれば、わからないまま、
その道を通らず避けて進めたらいいのにと想う。
 
なんだか心だけ戻って来ていないようで、
容赦ない冷気にも怖気づいて、
仮こたつでうじうじしながら眠った。