しがない書店員が手に取った気になる本たち。

 

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

とても好きになってしまった川上弘美さん。
そりゃあ好きな人の日記ですから!
にやにやしながら読んだりして。
東京人をまだ読んでいた頃...(苦笑)
楽しみにしていた連載が本になりました。
もう随分と昔のことのように憶うけど...
『東京日記』というタイトルは、控えめに。
あぁ、この店はあそこだ〜とか、
このともだちは、あのひとかな?とか。
嘘日記の『椰子・椰子 (新潮文庫)』も好かったけど、
"5分の4は本当日記"のこちらは、もっと好いかも。
こんな日記を書けたらなぁと想います。
 
夜旅

夜旅

 「美しくて不思議でどこか懐かしい、17の夜の旅。」
"路地と闇の写真家"といえば? こじつけだろうが、中里和人
このコンビでの三作目は、特殊な観光ガイドしても楽しめる一冊。
闇山、闇海、闇街、闇線路、闇空、闇猫、そして...闇蛾まで。
以前のどこか幻想的かつ非日常的な雰囲気よりも、
生々しさというか、"観ている"ような写真が多い印象。
各項における、締めの(決めの?)台詞が好いです(笑)
読んでのお楽しみということで。
出版記念の写真展が催されるようです↓

ギャラリー冬青 中里和人写真展「闇の蒸発」

 

愛という廃墟

愛という廃墟

廃墟は廃墟でも、ラブホテルの廃墟群。
こちらも『廃墟、その光と影』のコンビでの続編。
玉石混交乱発傾向も感じる、廃墟本のなかでも、
このコンビでの前作は、けっこう好みだったので(笑)、
こんなの出てたのか〜と嬉々として、覗いてみれば...。
これは、今までに観たことも感じたこともない世界。
色彩も光彩も意識してか、廃墟では珍しい、
原色的な風景や、鄙びたけばけばしさが映し出されています。
これがまた不思議と感傷的な印象が強く残り...
これは写真の妙なのか、ラブホテルという意識からか...。
名前も、セリーヌ、ブルー・シャトー、ロンドン、ドン・キホーテまで...。
しかもそれぞれが、かつて栄えた一国の城かと、
観間違うくらいの頽廃美に包まれて...。
ただただ浸っていたいのです。
惜しむらくは、フルカラーでお願いしたかった(贅沢ですね)
付録のDVDが観たくてしょうがない、肌寒い夜、憶い巡らす。
 
意中の建築 上巻

意中の建築 上巻

「目ざといタチ」で「観察癖」のある建築家が、
瞼と心に焼き付いた「意中の建築」への想い、印象、魅力を語った素敵な本。
写真や、著者自身のやわらかいイラストだけ見ていても好いけど、
文章がまた面白くて、著者の気さくな人柄も窺えます。
建築っていうと、自分などはどうにも"ツントオスマシ"的な敷居の高さを感じて、
興味はあるものの、端から眺めるばかりでしたが、
これをきっかけにしても良いのでは?とも想いました。
中でも印象に残ったのは、テレビ東京『美の巨人たち』で紹介されて、
魅了された「マティスの遺した光の宝石箱」。
もう写真だけでも充分なのに、そのエピソードや、
著者の言葉を読んでいたら、とてもとても行きたくなりました。
いつかいつかばかりの夢想が、現実になる日が来ればいいなぁと想います。
あと、タルコフスキーの『ノスタルジア [DVD]』も、観たくなってしまった!
こちらは上巻と来れば、下巻も同時発売でございます。

意中の建築 下巻

 

失恋おりがみ―30日で立ち直る

失恋おりがみ―30日で立ち直る

 「落ち込んだりもしたけれど、1ヵ月後には、きっと、元気になれる」
帯で、村上隆が、"魔法のクスリ"なんて書いている...。
なんだかツッコミどころ満載の本かと想いきや、
どんどん見入っていく自分...(笑)
まずカバーが凝っている。1ヵ月分のなにげないコピーと写真も好い。
欧米でもブームを呼んでいる"origami"、「おとなのおりがみ」。
この本は、"天性のトレンドセッター"秋元康による
想像力、哲学、才能、やさしさetc...を混ぜ合わせた仕掛け絵本のようだ。
しかも作品としても、澱みがない。
サンプルとして掲げられた30種のおりがみは、目を見張るほどの美しさで、
それはきっと、失恋から立ち直っていく自分自身に重ね合わされてゆくのだろう。
構成も素晴らしい。いやいや恐るべし...。
もちろん、失恋しなくても読んでみてください。眼からウロコ本。
 
バルテュスの優雅な生活 (とんぼの本)

バルテュスの優雅な生活 (とんぼの本)

 「絵を描くことは、祈りのようなものだ。」
ラブレーの子供たち』の表紙を観て以来、
気になっていた画家についての本が、タイムリーに出版された。
"孤高の画家"、通称「バルテュス」。
先日、検索していて辿り着き魅了された、初期の傑作『街路』を始めとして、
誤解も多く招いた、どこか奇妙で不思議で、
落ち着かない雰囲気に溢れた、歪な世界。
ただ、そこに魅せられた人は、けして少なくない。
 「私にとって、少女は神聖かつ不可侵な存在、完璧な美の象徴なのだ。」
『窓辺の少女』という美しい絵の、隣のページには、
その絵のモデルの少女が、そのまま振り返ったかのような写真が載っている。
作者のバルテュスと並んで...
もうそれだけで、なにかとてつもないものを目にしたような気がした。
気になっていた表紙の絵は、『地中海の猫』という題名。
代表作の『美しい日々』とは...
片山健の鉛筆画処女作の題名は、ここから取られたのだろうか?
だんだんと深みに嵌りそうな予感...。
関連本:

グラン・シャレ夢の刻

 
(略式)
セカンド・イノセンス ツレのための京都案内ガイドブック ヘイフラワーとキルトシュー かわいい生活。―プチスイートなインテリアと雑貨のほん (別冊美しい部屋)