今月は、音盤を一枚も買わないようにと心がけていたのに、
あまりに嬉しい出逢いがあり、結局一枚だけよ...と買い求めた。
午後に起床し、キッチンのテーブルにLPサイズのダンボールがひとつ。
そういえば、午前中に郵便が届いていたんだっけ。
半分寝たまま受けたから、すっかり忘れていた。
最近ではもう数少なくなった、どうにか聴きたかった音盤のひとつ。

White Heaven / Strange Bedfellow

1993年にPSFから限定700枚LPで発売されたホワイトヘヴンの2ndアルバム。
当然のことながら、現在は廃盤。
何年か前まではCDで再発予定と
当時のサイトに書かれていたけど、現在は予定なし。
渚にての1stをほぼジャケ買いしたのと同じ頃に、
"聴いてみたかった"くらいの軽い気持ちで、
モダ〜ンミュージックの中古棚に出ていた『OUT』を購入。*1
記憶も朧げだけど、この二枚によって
日本のインディーズ、アングラな音楽を聴き漁るようになるくらい
自分にとってはその後の音盤生活に影響を及ぼしたバンドだった。
 
このアルバムでのギターは栗原ミチオではなく、中村宗一郎。
さらにCD化されないことも加わって、勝手に過渡期の作品だと想っていたが、
まったくそんなことはなかった...!
むしろ、録音や音響面ではどこか稚拙さすら感じる『OUT』に比べて、
音の抜けの良さと書けばいいのか、曲ごとの音質的な表現は格段に素晴らしい。
(ちなみに録音は、現在ではピースミュージックという中村氏のスタジオ)
それに『OUT』と『Next to Nothing』のハザマの空白を埋めて、
つなげるにふさわしい作品でもある。
自分だけに限らず、White Heavenといえば、
"栗原ミチオのギター"という意識が強いと想うけど、
『Tokyo Flashback 2』で聴けた「Silver Current」でのギターの凄みから、
この2ndへの期待が否応無しに高まったままお預けをくらって、
ようやく聴けた音は、前作よりもバンドとしての表現力が向上しているように聴こえる。
栗原氏のなにかとてつもない生物が鳴いているような響きではないけれど、
曲ごとの色彩感がより強く出ているような音というか、
スタイルとして聴かせるようなギターになっていると想う。
やはり録音状態の印象なのかもなぁ。
石原さんの歌も、あの背中からぞくぞくして、
奥深く引きずり込まれるような感じが断然強い。
前作に比べてこのアルバムは振り幅が大きく、
多彩と書くと陳腐だけど、聴き始めの今はそんな印象もある。
VUやTelevisionにサイドギタリストが不可欠だったように、
『OUT』では、石原氏が奏でるサイドギターの美しさも魅力のひとつなのだが、
今作にはギターのクレジットはなし。
それでも素晴らしいサイドギターが聴ける曲もあり、
すべて弾いているのは中村氏なのだろうか?
「Silver Current」のJazzyなVer.も素晴らしいし、
「The Way We Were」の静かに煌めき絡みあうギターはとても美しい。
「Coloured Mind Drops」は、『Electric Cool Acid』の方が好いかな...。
聴くたびに違った音に聴こえるような気がして、
細部へ奥底へ彼方へと連れていかれるように麻薬的な響きを持つ
次作『Next to Nothing』への布石も感じられる。
ただ...『OUT』や『Next to Nothing』のような、
どこか独創的な雰囲気、決定的ななにかを感じられない気がしなくもない...。
それでも、しばらくは聴き浸り続けるだろう...。
稚拙極まる駄文を書いてしまったけど、書かずにはいられない。
やっぱりこんな論評めいたことは向いてないんだよな。不勉強。
しかし、これでまた世の音楽が違ったものに聴こえるようになるだろう...。
僕も表装的な音だけでは、感じ取れない"もっと注意深く隠されたもの"*2
もっともっともっと聴こえるようになるまで、音盤彷徨を続けよう。
 
 

*1:発売元の店で中古で買う当時の自分って...。

*2:G-Modern Vol.22 石原洋ロングインタビューより。